養殖サンゴ植付事業 養殖サンゴ植付事業

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沖縄の美しい海を守りたい

ブセナ海中公園養殖サンゴ植付事業

第2期

植付計画2023年3月~2024年3月

1.養殖サンゴ植付計画の策定

2020年はブセナ海中公園が開業して50周年となる節目の年でした。 OCVBが実施するSDGs活動の一環として、また開業50周年記念事業として、ブセナ海中公園では「養殖サンゴ植付計画」を策定し、サンゴ保全活動に取り組んでいるNPO法人コーラル沖縄を共同事業者として、本格的なサンゴ植付を実施することを決定しました。

ブセナ海中公園は一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(以下「OCVB」と表記)が管理・運営を行う観光施設です。
OCVBは 2021年2月1日、沖縄県の「おきなわSDGsパートナー」として登録されました。 沖縄県へ提出したSDGs計画書の中では、ブセナ海中公園の自然環境の保全についても力を入れることを明記しています。
OCVBがおきなわSDGsパートナーに登録されました。

2022年よりアラムコ・アジア・ジャパン株式会社による沖縄県サンゴ礁保全推進協議会からの助成支援を受け、ザ・テラスホテルズ株式会社と共同でサンゴ植付を実施しています。
本助成支援を実施するにあたり、2022年6月に事業始動報告会を実施しました。

  • 一般財団法人 沖縄観光コンベンションビューロー
  • SDGs ロゴ
沖縄観光コンベンションビューロー ブセナ海中公園事業所は、
持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

memo

現在、様々な団体がサンゴの植付や移植活動を実施していますが、サンゴ植付には確立された手法や技術がありません。サンゴ植付後にはモニタリング調査を実施しますが、生存率が0%という失敗事例も多数あります。
一方、沖縄では20年以上前に移植されたサンゴが成長し繁殖活動が確認されている事例もあります。ブセナ海中公園の養殖サンゴ植付計画では、過去の事例を参考にしながら、植付の手法、場所の選定、植え付けるサンゴの種類などを決定しました。
また「沖縄県 サンゴ移植マニュアル」及び「日本サンゴ礁学会 造礁サンゴの移植に関してのガイドライン」に沿った植付計画としています。

サンゴ植付の許認可

ブセナ海中公園は自然公園法で「海域公園地区」に指定されており、サンゴ植付を実施する際には県知事許可が必要になります。海域公園地区における開発行為は厳しく制限されており、調査・研究などの学術的目的、災害復旧や公益上必要であると認められた行為だけが許可されます。
海域公園地区マップ

沖縄海岸国定公園 海域公園地区

海域公園地区の範囲は、名護市字喜瀬及び恩納村字名嘉真地先海面で、部瀬名崎北端から北西300mの地点と名嘉真崎北西端から北西200mの地点を結ぶ海域となっています。
沖縄海岸国定公園 海域公園地区について

サンゴ植付を実施する際、単にサンゴを海底に置くだけではサンゴがうまく定着しません。サンゴを海底に固定する必要がありますが、そのために針金を使ったり、基盤ごとサンゴを接着剤で固定したりします。
自然公園法では、針金や基盤などが人工物と見なされるため「海域公園地区における人工物の設置」という観点で沖縄県への申請が必要となります。
ブセナ海中公園を含む海域公園地区では、これまでにサンゴの移植や植付を目的とした人工物設置の許認可を出した事例がありませんでした。窓口である沖縄県自然保護課と調整を重ねて、2021年2月に許可を得ることができました。

第2期においても、沖縄県自然保護課に許可申請を行い、2023年1月に許可を得ることができました。また、関連する申請書類として、沖縄県北部土木事務所にも、「工作物新築等及び公共用財産使用許可」を申請し、2023年2月に許可を得ることができました。

植付場所の選定

サンゴは非常にデリケートな生物であるため、環境が合わない場所ではうまく生育できません。 植付場所の選定では、水深、水質、水温、潮の流れ、海底の状態、他の生物による食害の有無など、様々な視点から検討する必要があります。

また、将来的にブセナ海中公園の利用者が植付サンゴを観察できるよう、アクセスがしやすい場所であることも条件の一つとなります。
複数の条件を兼ね備えた場所として、グラスボートの発着場所から近い場所でサンゴ植付を実施することを決定しました。

植付場所選定マップ
下記の条件を満たす場所を選定
  • 水深3m程度、突堤から近いため植付作業やモニタリング調査が容易である。

  • 海底の地形がほぼフラットで岩盤質でありサンゴ植付に理想的である。

  • 近くに良好な状態のサンゴ礁があり、サンゴが生育できる環境が整っている。

  • 潮通しが良く、夏場の高水温時でも白化現象が発生する可能性が低い。

  • サンゴ食害生物であるオニヒトデ、レイシガイダマシ類、ブダイ等が少ない。

ドナー「親サンゴ」入手経路、植付サンゴの種類

親サンゴ

沖縄県の漁業調整規則では、造礁サンゴの採捕が禁じられており、違法に採捕したサンゴの所持や販売も禁止されています。サンゴの移植や植付では、合法的に養殖して増やしたサンゴを使うことが求められます。
沖縄県内でサンゴを養殖している施設は複数ありますが、サンゴ保全活動で大きな実績を残しているさんご畑からシコロサンゴを分けて頂きました。

今回植付するエダコモンサンゴはブセナ海中公園内の海域に多く生息しています。第2期では、波浪などの影響で折れたエダコモンサンゴの破片を採捕し、植付を行います。
なお、エダコモンサンゴの破片を採捕するにあたり、「特別採捕許可」を沖縄県に申請する必要があります。窓口となる沖縄県水産課と調整を重ね、2022年11月に「特別採捕許可」を得ることができました。

下記の条件を満たすサンゴの種類を選定
  • ドナー(親サンゴ)の入手が容易であり一般的な種類のサンゴであること。

  • 遺伝的に近いサンゴであること(ルーツが沖縄本島西海岸であること)

  • 信頼できる養殖場で増やしたサンゴであること。

  • 過去に移植や植付が行われた実績があり、ブセナ海中公園でのサンゴ植付後に生存する可能性が高い種であること

  • シコロサンゴ
    シコロサンゴPavona decussata
    エダサンゴと異なり大きくて厚い葉状片が板を組み合わせたように垂直に生育するため、物理的な障害(大波など)に強い。生物が少ない環境下において、最も早く侵入する先駆種であり、同種が定着することにより他の種類のサンゴを呼び込む効果が期待できる。
    種苗の育成方法が確立されており、沖縄県内での植付事例が豊富である。夏場の高水温に最も強い種の1つとされている。
  • エダコモンサンゴ
    エダコモンサンゴMontipora digitata
    ブセナ海中公園に生息しているサンゴであり、植付後に高い生存率が期待できる。
    枝が垂直に伸びる傾向が強く、砂などをかぶりにくい。沖縄県内でドナー(親サンゴ)が入手でき、種苗の育成方法が確立されており移植事例も豊富である。
    比較的高水温に強い種類の1つである。

memo

サンゴ礁学会のサンゴ移植ガイドランでは「サンゴ礁生態系の遺伝的攪乱に最大限注意すること」としています。
その地域に生息していないサンゴを持ち込んだり、生息している種でも遠隔地から搬入してサンゴ群集の遺伝子を攪乱させないような配慮が必要です。

2.サンゴ苗の育成

サンゴ苗の育成

サンゴ苗の育成は、サンゴ苗を提供いただいたさんご畑で行います。さんご畑は、最大30万株のサンゴを育てることができる日本最大のサンゴ養殖施設で、沖縄県の特別採捕許可により採捕されたサンゴを増やしてサンゴ移植活動を実施している施設です。

琉球石灰プレートと簡易設置型の着床具のそれぞれにシコロサンゴの苗を固定し、さんご畑内の水槽で育成しました。

サンゴ育成レポート

サンゴ育成レポート

第2期の作業(2022年9月27日)は、サンゴ植付事業関係者にてシコロサンゴ約60本をサンゴ苗として準備しました。

サンゴの苗作り・育成ドナー(親サンゴ)からサンゴを株分け(苗作り)する作業は、以下のような工程となります。
サンゴ苗作り

数cm片に株分けしたサンゴを琉球石灰岩プレート(基盤)に乗せて、天然ゴムで固定します。この状態で2~3ヶ月ほど水槽で飼育すると、皮膜が形成されてサンゴが基盤に活着します。

  • サンゴ苗作り写真1
  • サンゴ苗作り写真2

固定作業では、サンゴへのダメージを最小限におさえるため、水中で手早く作業を行います。 また、天然ゴムで固定する際には、サンゴの形状をよく見てどのように基盤に乗せると接着面積が大きくなるのかを考えます。

3.サンゴ植付作業

サンゴ植付用ボンド

工法

養殖サンゴ植付には様々な方法がありますが、第1期で実施した「ボンド法」に加え、第2期では新たに「簡易設置型のサンゴ着床具を利用した植付」、「メッシュポットを利用した植付」の2つの植付方法に取り組みました。

サンゴ植付レポート

第2期のサンゴ植付作業は、2回に分けて実施しました。
「ボンド法」と「簡易設置型のサンゴ着床具を利用した植付」は、2023年3月3日に行いました。
「メッシュポットを利用した植付」は、2023年3月21日に行いました。
海に入る前にサンゴ植付に関するブリーフィングを行います。
安全に配慮して海中で時間内に作業を終われるよう、植付場所や作業手順の確認など入念な打ち合わせを行い作業しました。

植付作業

  • ボンド法
    による植付
  • 簡易設置型のサンゴ着床具を
    利用した植付
  • メッシュポットを
    利用した植付
  • 植付作業1 海へのエントリー

    ステップ1

    ブセナ海中公園の突堤からエントリーします。沖合30mにある植付場所まで、慎重にサンゴ苗を運びます。

  • 植付作業2 サンゴ植付場所掃除

    ステップ2

    サンゴを植え付ける前に、植付場所のコケ取り作業を行います。接着面に藻類やゴミ等があると水中ボンドがうまく接着できないため、ブラシを使って植付場所の表面を綺麗にします。

  • 植付作業3 サンゴ植付ボンド工法

    ステップ3

    コケ取り作業後、海中で素早くボンドを混ぜ合わせてサンゴ苗の基盤の下側にボンドを付けます。1つのサンゴ苗に必要なボンドの量はゴルフボール大程度です。

  • 植付作業4 サンゴ植付海底接着

    ステップ4

    サンゴ苗と海底を水中ボンドで接着します。水中での作業は難しいですが、できるだけ体重をかけて圧着するようにします。うまく接着しない場合は、植付場所を微調整して新しい水中ボンドを使ってやり直します。

  • 植付作業1 海へのエントリー

    ステップ1

    ブセナ海中公園の突堤からエントリーします。沖合60mにある植付場所まで、慎重にサンゴ苗を運びます。

  • 植付作業2 簡易設置型の着床具設置

    ステップ2

    植付場所周辺の海底に生物がいないことを確認し、簡易設置型の着床具を設置します。
    設置する際、固定したシコロサンゴに気を付けながら、着床具同士ができるだけ接着するように設置します。

  • 植付作業3 設置場所の微調整

    ステップ3

    れきや岩などにより、海底の凹凸があるため、着床具が安定するように設置場所の微調整を行います。

  • 植付作業1 海へのエントリー

    ステップ1

    沖合80mにあるエダコモンサンゴが発達するポイントに移動します。
    波浪などの影響により折れたエダコモンサンゴを採捕します。

  • 植付作業2 植付の準備

    ステップ2

    作製したメッシュポットに小石を入れ、その後エダコモンサンゴをメッシュポットに入れ込みます。エダコモンサンゴを固定するために、小石を追加で入れます。
    植付の準備ができたメッシュポットは、植付場所まで慎重に運びます。

  • 植付作業3 メッシュポット植え付け

    ステップ3

    植付場所はリュウキュウスガモなどの海草が生息する砂地のポイントです。メッシュポットが波浪等で動かないようにするために、砂地に少し穴を掘り、メッシュポットを植え付けます。

4.サンゴ成長記録

養殖サンゴ植付では、植え付けた後に成長や生存率などを調べるため、定期的なモニタリングを行うことが重要です。
ブセナ海中公園では、サンゴ植え付けから1週間後、1カ月後、3カ月後、6カ月後、1年後、その後は1年毎にモニタリング調査を実施することとしています。モニタリング調査の結果については、下記から参照して下さい。

  • 第2期(2023年3月~2024年3月)

第2期のサンゴ植付作業は、シコロサンゴ78個(2023年3月3日)、
エダコモンサンゴ30個(2023年3月21日)、合計108個のサンゴ苗の植付を行いました。

シコロサンゴ

エダコモンサンゴ

5.ブセナ海中公園の目指す姿、今後の課題

ブセナ海中公園の目指す姿、今後の課題

ブセナ海中公園の50周年記念事業としてスタートした養殖サンゴ植付計画ですが、第2期(2022年度)からは、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社による沖縄県サンゴ礁保全推進協議会からの助成支援を受け、ザ・テラスホテルズ株式会社と共同で実施しています。
ブセナ海中公園の海の豊かさを守るため、近隣の事業者や研究機関などと連携しながら、今後も取り組んでいきます。

ブセナ海中公園は沖縄の海洋観光の先駆けとして、50年以上に渡り沖縄の海の素晴らしさを沖縄県民と観光客の皆様にお伝えしてきました。引き続きその役割を果たせるよう、これからも養殖サンゴ植付計画を含めたSDGs活動を推進します。
海の豊かさを守ろう SDGs
  • ブセナ海中公園
  • 一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー

(一財)沖縄観光コンベンションビューロー
ブセナ海中公園事業所

沖縄県名護市字喜瀬1744-1TEL.0980-52-3379FAX.0980-53-0675

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