沖縄の美しい海を守りたい
第4期
植付計画2024年4月~2025年4月
2020年はブセナ海中公園が開業して50周年となる節目の年でした。 OCVBが実施するSDGs活動の一環として、また開業50周年記念事業として、ブセナ海中公園では「養殖サンゴ植付計画」を策定し、サンゴ保全活動に取り組んでいるNPO法人コーラル沖縄を共同事業者として、本格的なサンゴ植付を実施することを決定しました。
ブセナ海中公園は一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(以下「OCVB」と表記)が管理・運営を行う観光施設です。
OCVBは 2021年2月1日、沖縄県の「おきなわSDGsパートナー」として登録されました。
沖縄県へ提出したSDGs計画書の中では、ブセナ海中公園の自然環境の保全についても力を入れることを明記しています。
OCVBがおきなわSDGsパートナーに登録されました。
2022年よりアラムコ・アジア・ジャパン株式会社による沖縄県サンゴ礁保全推進協議会からの助成支援を受け、ザ・テラスホテルズ株式会社と共同でサンゴ植付を実施しています。
本助成支援を実施するにあたり、2022年6月に事業始動報告会を実施しました。
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現在、様々な団体がサンゴの植付や移植活動を実施していますが、サンゴ植付には確立された手法や技術がありません。サンゴ植付後にはモニタリング調査を実施しますが、生存率が0%という失敗事例も多数あります。サンゴは非常にデリケートな生物であるため、環境が合わない場所ではうまく生育できません。 植付場所の選定では、水深、水質、水温、潮の流れ、海底の状態、他の生物による食害の有無など、様々な視点から検討する必要があります。
また、将来的にブセナ海中公園の利用者が植付サンゴを観察できるよう、アクセスがしやすい場所であることも条件の一つとなります。
複数の条件を兼ね備えた場所として、グラスボートの発着場所から近い場所でサンゴ植付を実施することを決定しました。
水深3m程度、突堤から近いため植付作業やモニタリング調査が容易である。
海底の地形がほぼフラットで岩盤質でありサンゴ植付に理想的である。
近くに良好な状態のサンゴ礁があり、サンゴが生育できる環境が整っている。
潮通しが良く、夏場の高水温時でも白化現象が発生する可能性が低い。
サンゴ食害生物であるオニヒトデ、レイシガイダマシ類、ブダイ等が少ない。
沖縄県の漁業調整規則では、造礁サンゴの採捕が禁じられており、違法に採捕したサンゴの所持や販売も禁止されています。サンゴの移植や植付では、合法的に養殖して増やしたサンゴを使うことが求められます。
沖縄県内でサンゴを養殖している施設は複数ありますが、サンゴ保全活動で大きな実績を残しているさんご畑からシコロサンゴを分けて頂きました。
今回第4期では、シコロサンゴ以外にも、エダコモンサンゴの植付も行います。植付で使用するエダコモンサンゴはブセナ海中公園内の海域に多く生息しており、その一部を採捕して、植付を行います。
なお、サンゴ採捕するにあたり、「特別採捕許可」を沖縄県に申請する必要があります。窓口となる沖縄県水産課と調整を重ね、2024年7月に「特別採捕許可」を得ることができました。
ドナー(親サンゴ)の入手が容易であり一般的な種類のサンゴであること。
遺伝的に近いサンゴであること(ルーツが沖縄本島西海岸であること)
信頼できる養殖場で増やしたサンゴであること。
過去に移植や植付が行われた実績があり、ブセナ海中公園でのサンゴ植付後に生存する可能性が高い種であること
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サンゴ礁学会のサンゴ移植ガイドランでは「サンゴ礁生態系の遺伝的攪乱に最大限注意すること」としています。今回第4期でも、前回の第3期と同様にブセナ海中公園内の海域(ボート乗場付近)で中間育成を行いました。なお、沖縄県の関係部署に許可申請を行い、中間育成を行っています。
簡易設置型の着床具に固定したシコロサンゴの苗を約3カ月(2024年11月26日から2025年3月2日まで)の期間、中間育成を行いました。
第4期の作業(2024年11月26日)は、サンゴ植付事業関係者とサンゴ保全活動体験プログラム参加者(ザ・ブセナテラス主催)にてシコロサンゴ30群体をサンゴ苗として準備しました。
サンゴ専用の水中接着剤を使って、数cm片に株分けしたサンゴを簡易設置型の着床具に固定します。サンゴと基盤をしっかりと付けるため、はみ出た接着剤に砂をかけ、海水につけて硬化させます。この状態で2~3カ月ほどでサンゴが基盤に活着します。
水中接着剤を使って固定作業を行う際、サンゴへのダメージを最小限におさえるため、手早く作業を行います。着床具に事前に溝を作り、接着剤を塗りやすくすることで、作業をスムーズに行うことができます。
工法
サンゴ植付には様々な方法がありますが、今回の第4期では、第3期で実施した「簡易設置型のサンゴ着床具を利用した植付」、「メッシュポットを利用した植付」の2つの方法で植付を行いました。
第4期のサンゴ植付作業は、2回に分けて実施しました。
「メッシュポットを利用した植付」は、2024年12月23日に行いました。
また、「簡易設置型のサンゴ着床具を利用した植付」は、2025年3月3日に行いました。
海に入る前にサンゴ植付に関するブリーフィングを行います。
安全に配慮して海中で時間内に作業を終われるよう、植付場所や作業手順の確認など入念な打ち合わせを行い作業しました。
ステップ1
ブセナ海中公園の突堤からエントリーします。沖合90mにある植付場所まで、慎重にサンゴ苗を運びます。
ステップ2
植付場所周辺の海底に生物がいないことを確認し、簡易設置型の着床具を設置します。
設置する際、固定したシコロサンゴに気を付けながら、岩場にある隙間や礫のくぼみなどの隙間に設置します。
ステップ3
着床具を設置後、着床具の傾きやぐらつきがないか確認し、着床具が安定するように設置場所の微調整を行います。
ステップ1
沖合80mにあるエダコモンサンゴの群落が発達するポイントでエダコモンサンゴを採捕します。
ステップ2
作製したメッシュポットにエダコモンサンゴを入れます。
波浪等によりサンゴが無くなるのを防ぐため、メッシュポットに絡まるようにエダコモンサンゴを入れ込みます。
植付の準備ができたメッシュポットは、植付場所まで慎重に運びます。
ステップ3
植付場所はリュウキュウスガモなどの海草が生息する砂地のポイントです(第3期のエダコモンサンゴを植付したポイント周辺)。
メッシュポットが波浪等で動かないようにするために、砂地に少し穴を掘り、メッシュポットを植え付けます。
養殖サンゴ植付では、植え付けた後に成長や生存率などを調べるため、定期的なモニタリングを行うことが重要です。
ブセナ海中公園では、サンゴ植え付けから1週間後、1カ月後、3カ月後、6カ月後、1年後、その後は1年毎にモニタリング調査を実施することとしています。モニタリング調査の結果については、下記から参照して下さい。
第4期のサンゴ植付作業は、シコロサンゴ19群体(2025年3月3日)、
エダコモンサンゴ30群体(2024年12月23日)、合計49群体のサンゴ苗の植付を行いました。
シコロサンゴ
エダコモンサンゴ
1週間後生存率 100%
2025年3月14日 【天候:雨】
1週間後生存率 96%
2025年1月17日 【天候:曇り】
1カ月後生存率 96%
2025年2月12日 【天候:曇り】
植え付けしたサンゴの植付場所周辺に水温計を設置し、海水温を計測しています。上記のグラフは2023年夏場(6月から9月まで)の海水温と2024年夏場(6月から9月まで)の海水温を比較したグラフです。
2023年夏場の平均海水温は約28.6℃、2024年夏場では約29.2℃となり、2024年夏場の方が約0.6℃海水温が高くなっていました。
2023年夏場で最も海水温が高くなったのは(最高海水温)約30.6℃で、2024年夏場では約31.9℃となり、2024年夏場の最高海水温の方が約1.3℃高くなっていました。
2023年夏場においては7月下旬から8月上旬にかけて海水温が急激に下がっており、同時期に台風6号が沖縄地方に接近したことにより、海水がかき混ぜられたことがその理由として考えられます。
2024年はブセナ海中公園周辺で自然に生息するサンゴ及び植え付けしたサンゴともに白化が確認されましたが、その要因として、海水温が上昇していること、また台風の接近が少なく、高水温が長期に渡って続いたことが上記のグラフから考えられます。
ブセナ海中公園の50周年記念事業としてスタートした養殖サンゴ植付計画ですが、第2期(2022年度)からは、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社による沖縄県サンゴ礁保全推進協議会からの助成支援を受け、ザ・テラスホテルズ株式会社と共同で実施しています。
ブセナ海中公園の海の豊かさを守るため、近隣の事業者や研究機関などと連携しながら、今後も取り組んでいきます。
(一財)沖縄観光コンベンションビューロー
ブセナ海中公園事業所
沖縄県名護市字喜瀬1744-1TEL.0980-52-3379FAX.0980-53-0675